火星との交信記録

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年越し宗谷岬ツーリング2019【まとめ編】

元旦を宗谷岬で迎えるためにスパイクタイヤを履かせ、北海道をツーリングするライダーがいます。

4年程前にその存在を知って以来、いつかはやってみたいと思っていました。2019年を迎えるにあたりついに行くことができましたので、その模様をまとめようと思います。

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ちなみにこのいわゆる宗谷岬年越しツーリングは、凍結路を低速で走るバイクが

道民の迷惑になっているとして、走行動画のコメント欄が荒れたりしています。

公道をゆっくり走ることは法令違反ではないですし、北海道の地元ナンバーの車でも遅い車はいます。

しかしながら、ネットで情報が簡単に手に入るようになった事で参加者は年々増えており、凍結路を走行するバイクの弊害が目にあまるようになってきているのも事実のようです。

1人のライダーとして、客観視するのが難しい問題です。

今後参加される方は1度この問題と向き合い、自分なりの答えを出してから行くべきだと思います。 

 

【年越し宗谷岬が普通のツーリングと違うところ】

このブログでは、大晦日宗谷岬で迎えるためにバイクでツーリングすることを今後「年越し宗谷岬」と呼んでいきます。 

年越し宗谷岬の特徴的な点は、「スパイクタイヤが必要」という点です。

1月の北海道はその道のほとんどがアイスバーン状態で、スパイクタイヤなしでは走行は不可能です。

一部のスクーターやウラルなどはスタッドレスタイヤの入手が可能なのでスパイクタイヤを履いていませんでしたが、基本的に年越し宗谷岬に参加するバイクはスパイクタイヤを履いています。

 

また、「氷点下での走行が基本」というのも特徴的な点です。

 

バイクにはハンドカバー、グリップヒーター、アイシングを防ぐためにキャブ周りを塞ぐなどの細工が必要ですし。内地の極寒ツーリングの比ではない防寒装備が必要です。

このあたりの装備などは、別な項で、「装備編」として述べていこうと思います。 

 

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【今回の行程】

2018/12/28スタート

1日目:

忘年会を途中で抜け出し、大阪市内より舞鶴道などを使い舞鶴へ。途中で雪が降り、冬タイヤ規制が始まっていました。かなりの降雪量で、この時期に夜舞鶴道を走るのは避けれるなら避けたほうがいいかもしれません。

(実際僕の走った次の日に、事故車にトラックが突っ込み2人が亡くなる事故が起きました)

舞鶴発 23:30のフェリーに乗船

2日目:

この日のフェリーは大荒れで、港外に出たとたん船内が一瞬無重力になるような大シケが続きました。ずっとベッドに寝ていて3食とも食べれなかったというライダーが大勢いました。

僕も絶食且つ、ずっと倒れていて2回吐いた末に小樽の地を踏みました。

上陸後も暫くは、体が揺れているように感じる「陸酔い」を初めて経験しました。 

小樽市内は圧雪路に覆われており、いきなり雪上走行がスタート。

しかし、思ったよりも滑ることなく投宿。

「スマイルホテル 小樽」おすすめです。200円の追加料金でバイクを屋根の下に停めれます。フェリー乗り場からも5分圏。ドミトリーですが、仕切られておりプライバシーは確保できました。宿泊費3000円程でした。

上陸後すぐに北上するライダーもいるようです。

しかし僕は、なれない雪道を夜間走行するリスクを考慮し小樽で泊まることにしました。

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3日目 

朝7時に出発。

小樽駅前を走る5号線→札幌市街を避け337号線→275号線で旭川に向かい

→その後40号線を北上。

最短の海岸線を避けたのは、この日大寒波が日本海側に迫っており、海岸沿いの天候が読めなかったからです。(同じ理由で内陸を選んだライダーは多かったです) 

道の駅「もち米の里☆なよろ」に16時ごろに着き、そこを「ここをキャンプ地とする」しました。

一応、道の駅の管理人の方に許可を取り、駐車場にテントを張らせて頂きました。

管理人の方から「24時間開いてる自販機スペースの方が暖かいので、そこで寝たらどうか?」と言われましたが、人の通りがありそうなので丁重にお断りしました。

また、管理人の方からは差し入れとして同駅の名産の大福を幾つか頂きました。

非常にありがたかったです。 

テントを立て終えて荷下ろしをしていると、群馬から来たカブ乗りの方が到着されました。

大福やつまみをシェアし、2人で道中の様子を話しながら杯を交わしました。

カブ乗りの方は苫小牧スタートだったのですが、パンク修理に手間取りかなり北上に時間を要したようです。 

この寒さの中でのパンク修理は考えただけで気がめいります。

僕は、空気圧を130bar以下に落とすことはしませんでした。この空気圧ですとフロントが跳ね少しでも路面が荒れるときついです。

しかしビートストッパーがない為、これ以上圧を下げることはしませんでした。

気温はー10度まで下がりましたが、冬山用のシュラフもあり快適に眠れました。 

 

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もち米の里☆名寄

3日目 

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もち米の里☆名寄 出発前

朝は7時くらいに起きました。

道の駅に寄って来たライダーに昨日頂いた大福をシェアし、情報交換をします。このブロンコのライダーさんはインスタグラムでかなり知られた方で、今回で3度目の年越し宗谷岬だそうです。

この日はひたすら40号線で北上。

路面はほとんど凍結しておらず、順調に稚内に辿り着きました。

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稚内市内のスーパーで買い出しを行い、宗谷岬を目指します。

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後から買っとけばと後悔したホタテ。やっぱ北海道は海鮮系は安いです。

途中猛吹雪に襲われるも、無事宗谷岬にゴール。16時にはテント設営を開始できました。 

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この16時にはサイト入りしているというのは、かなり優先度の高い項目だったのですが、後半でこのルールを破りえらい目にあうことになります。 

16時以降、つまり日没以降の走行はお勧めできません。シカに突っ込む危険性もあります。また、街灯の少ない北海道の田舎道で吹雪けば、路肩を認識することもできないと思います。

宗谷岬は16時の時点でめぼしい場所はテントで埋まっており(トイレ周辺)、僕は国道沿いに張ることにしました。こんなに道路に近い所で寝るのは初めてです。

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右のテント群の一つが僕、足下30cmで国道

 テントを張ると何をするでもなく、ご近所さん同士で宴会が始まります。

京都から車で来られた方がビールを1ケース差し入れてくださり、また沖縄からカブで来られた方がタープ並みに大きなテントを提供してくれました。

みんなで肩寄せ合って、テントの中で宴会です。 

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年越し村

その後はビール片手に集まった100台以上のバイクの見学。
カブ系、スクーター系はBONSANというメーカーのタイヤが多かったのですが、実際に使ている人曰くピン数が少なく滑りやすいとのこと。

お手頃価格な事もあり、購入を検討されている方もおられるかもしれませんが、自分でピンを追加するなどの加工が必要かもしれません。 

一度寝た後、年越しカウントダウンに参加します。

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年越しの瞬間

年越しは花火が一発上がっただけで、かなり拍子抜けでした。

周りの人見知らぬ人たちと「Happy new year!」と新年のあいさつを交わします。

 

【4日目】

日付が変わった瞬間に、宗谷岬神社にご近所さんとなだれ込みました。

帰路の無事を祈願し、おみくじをひき(小吉)、テントに戻ります。

初日の出前に稚内市長からのあいさつから始まり、各種イベントがあったようですがビールを程よく飲んだせいか爆睡。

一瞬花火が上がったのをテントの中から撮りった以外は寝てました。起きてた人曰く、日の出は見れなかったようです。

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8時くらいにテントから出ると、昨日は周りにあれほどあったテントはなく、どうやら新年早々出遅れたようです。

バッテリー上がりを起こした他のXRを助けた後、(ウラルのバッテリー直結でかかりました、感謝、ウラルほしい)稚内の最北端マックで人間の給油を済ませ、ガソリンを入れ日本海側に出ます。

道道106→232号(通称 オホーツクライン)でひたすら南下します。

道はほとんどアスファルトがでており、かなりいいペースで南下できました。

途中、「道の駅 ロマン街道しょさんべつ」で投湯。

宗谷岬から先行していた、カブとスクーターの2人に追いつきました。

この時点で16時、本来であればこの駅でテントを張る時間です。

しかし食料がなかったので少し先の初山別村まで行き、買い出しをした後ピストンすることに。

しかし、初山別村手前の海岸線がかなり凍結しており戻る気が失せたので更に南下することにします。

25㎞先の「道の駅 ほっと・はぼろ」を目指します。途中で日が暮れ、海岸線の強風も相まって、かなりきつい行程でした。街灯もないので道のコンディションが読めず、祈るような気持ちで低速走行。

日暮れ後の走行は厳禁です(翌日もするのだが)。数年前、北海道の田舎道で事故を起こした車内で凍死した事故もありましたし、路肩に放り出されて見つけてもらえなければ死ぬと思います。

その日の行程をあらかじめ把握し、日の出から日の入りで移動が完結するプランニングをする事が大切だと身に染みました。

言い訳すると、「寝坊して距離が稼げてなかった」「宿泊予定の道の駅に戻る道の凍結具合がひどく、転倒のリスクもあった」といった点で日没後の走行を決断したのですが、酷く後悔しました。

「道の駅 ほっと・ほぼろ」は元ホテルだったような立派な建物で、とても野宿できる環境ではありませんでした。泣く泣く更なる南下を決意。

たった8Km南下するのに15分ほどかけて「道の駅 風Wとままえ」に到着。

一応宿泊施設もあるのですが、6500円という都内並みのプライスを提示され、意地でも泊まるかと。しかし、ホテルの前に泊まって営業妨害になるのも申し訳ないので、目立たない駐車場の隅の雪原を踏み固めてサイト場にします。

独りぼっちで寒いし、厳しめだなと思っていたら聞き覚えのあるエキゾーストが。

宗谷岬で一緒だったXR乗りでした。

2人で宴会をします、救われました。

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【5日目】

朝から酷い雪、フライの隙間から雪が入ってきます。スノーフライってこのためにあるのかと実感。賞味期限切れのおにぎりをフリーズドライの味噌汁にぶち込み朝食。

フライシートを滑り落ちる雪の音を聞きながらうつらうつらしていましたが、XR乗りが出発するというので僕も移動することにしました。

こちらの雪は非常に乾燥していて、まったくべちゃべちゃせず、砂のように掃えます。

しかし、ここまで降られるときつい。

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吹雪の中撤収

とりあえず給油するために羽幌に一旦北上するのですが、エンジンがおかしい。

全くふけ上がらない。坂を登れないので引き返しますが、ますます吹雪は強くなり前が見えずに路肩の雪に突っ込みハンドルを取られて転倒。

転倒というか、雪の山にもたれかかっただけ(ここ重要、僕は公式には無転倒でツーリングを終えたことにしています)だったので被害はありませんでした。

なぜかこの時僕の頭の中で、雪がシートの隙間につまりエア不足が起きているという確信があり、なんとか道の駅戻り軒下でシートを外し雪を掃いました。

結果あっけなく復帰。そこにXR乗りが戻って来たので、道の駅で一緒に昼食をとりました。

昼食後、XR乗りは南下。僕は再び羽幌に北上し、給油後同じく南下します。

留萌までの道は吹雪も収まり快走。

そして、留萌から東に進路を変え内陸を目指します。朝の吹雪のような、天候のリスクが多い日本海側を、これ以上南下するのはリスクが高いように思えたからです。 

233号線で留萌市内から内陸に向かい、「道の駅 サンフラワー北竜」で野宿。これが僕の考えた計画でした。時刻はまたも16時。

再び誓いを破ることになるのですが、内陸側の道にまで出れば大丈夫だろうと峠越えを決意。

しかし!この日本海側と内陸側を隔てる峠道は、つるつるのアイスバーンの上に非常にぼこぼこで、タイヤがバンバン弾かれます。前輪を軸にくるりと1回転したところで引き返すことを決意。留萌市内に戻ってきました。

と、そこにすさまじい吹雪。吹雪の壁にライトが反射され、前が見えません。

これはだめだ、宿取ろうと思ったのですが、留萌市内の宿は正月ということで軒並み休業。市内の野宿スポットは、海際にキャンプ場がある以外はいくつか公園がある程度。

セイコマのイートインでグーグルマップを確認。ストリートビューで確認すると、海際にかなり立派なバス停がある事を確認。最後の望みを託して、XRを走らせます。

 

 

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バス停があった....

そこには確かにバス停があった...扉を開けると鍵はかかっていませんでした。

なだれ込むように中に入り、「ここをキャンプ地とする」したわけです。

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ちなみに吹雪は上記のような感じ。

シールドに雪はつくし、まともに走れません。

バス停の窓から、吹雪を眺めながら眠りに付きました。

【6日目】

翌朝、除雪機の音で目が覚めました。

1宿の恩義として、バス停の中にあった雪かきスコップでバス停前を除雪。

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昨日の峠道に懲りた僕は231号線、つまり海岸線で南下を決意します。 

昔は陸の孤島と呼ばれていた、暑寒別のふもとの町をトンネルでつなぐように走ります。険しい山が、町と町の間を壁のように区切っているような地形です。

路面は非常にフラットで、時たまヒヤッとすることはあるものの淡々と進みます。

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暑寒別を望む

札幌に近づくにつれ、道の上の雪はどんどんなくなり、車も増えてきました。

もはや寒いだけのツーリングです。

その日は千歳に泊まるつもりだったのですが、あまりにペースが良すぎる。このまま苫小牧から帰ってやろうと思いました。電話で空席を訊ねると空きはあるとのこと。

予約を変更し、ターミナルに向かいます。

こうして、僕の年越し宗谷岬は終わりました。

非常に楽しかった。

僕は日本一周もしてるし、海外も走ってます。世界中走ってるわけではないのでおこがましいですけど、それでもツーリングという行為に飽きが出てきていました。

北海道の日々は毎日が新鮮で、初めて遠乗りに出かけた日のような、未知の世界に向かって進む喜びにあふれていました。

来年も行く?と聞かれたら答えは「No」、やっぱり僕は真っすぐなフラットダートをかっ飛ばすようなツーリングが好きです。フロントを取られてヒヤッとするのはね...ちょっと。

おちまい。

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