火星との交信記録

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コロナを生きる2】社会隔離、サイゴンの一番静かな日

ベトナム戦争中にサイゴンに駐在していた新聞記者、近藤紘一が、自身のサイゴン陥落までの日々を綴った「サイゴンの一番長い日」というノンフィクション小説がある。 

今回の主題とは外れるが、戦争も末期、共和国の空軍の中に侵入していた共産側のスパイが戦闘機を奪い大統領官邸を空爆するのを彼は目撃していて、僕は毎回官邸の前(今は統一会堂と呼ばれている)を通る度に「ああ、ここを…」と近藤紘一に思いを馳せている。

そして統一会堂は割と(週一くらい)前を通るので、僕が近藤紘一気分に浸る頻度はかなり高い。 

 

閑話休題

 

コロナ第4波は感染力が凄まじく、ベトナムでは13万人が感染、死者は1,126人。ホテルと職場の間を往復していた僕だったが、職場の人数を最小限にするためにホーチミンに戻され在宅勤務となった。(日本の累計死者数は12倍以上、大丈夫ですか?)  

HCMCに帰った当初は食料品を売る店は営業しており、自由に買い出しに行けたのだが(スーパーやコンビニなどでは入店制限があったが)、規制は徐々にきつくなり今や;

1.ECのデリバリーは必需品のみ(電化製品など必需品のリストに無い物を運んでいるドライバーは罰金、1万円) 

2.18時以降の外出禁止(見つかると罰金、1万円)

3. 日中の外出は食料品の買い出しに限る。尚且つ役所に行って許可証をもらう必要がある。(4日に1度、許可証は最初に入店した店で回収されるので、1店しか行けない)

4.上記の#1の後に、デリバリーは区境を超えてはならないという制限が追加され、一時配達員不足でスーパーのデリバリーが止まるという事態になった。  

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許可証、4枚綴り。これがないと入店できません


でも食料品はスーパーから無料でデリバリーされるし、(加工済みの物、総菜などはデリバリーされない。よってグラブフードも止まってる)今まで外食一辺倒だったのを調理器具を買い込むことで対応している。そんな困っていない。 

それでもスーパーのサイトで注文すると、配達は2-3日後になる(かも)という表示が出る。 

 

でも生活できなくなった現地人はいっぱいいて、故郷に戻る人が大勢いる。それも往来制限によって帰ることさえ叶わない人も多い。  

 

街の静けさは特筆すべきものがある。

特に18時以降は往来が全くないので、田舎町のような静けさ。虫の音がない分サイゴンの方が静かかもしれない。 

サイゴン陥落時は市内でも僅かに抵抗があったと近藤紘一は書いているし、翌日には露店が営業を始めていたそうだ。(解放翌日がメーデーだったのもあって、メーデーのデモ行進もあったと書かれている)そう考えるとこの静けさはサイゴン近代史始まって以来のデシベル指数かもしれない。

 

 

近代史始まって以来喧噪に晒されてきたサイゴンの家々の壁は、心なしか居心地が悪そうだ。 

 

おちまい